地中熱利用24時間換気システム

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山口県農林総合技術センター様(山口県)


ジオパワーシステムのグリ石から発想、暖房コスト80%削減!
太陽エネルギー利用蓄熱式イチゴ栽培システム

今回は太陽エネルギーを利用した蓄熱式のイチゴ栽培に取り組む山口県農林総合技術センター様のイチゴハウスへのジオパワーシステム導入事例についてご紹介します。

背景

日本のイチゴ生産のほとんどを占めるハウス促成栽培において、冬期に安定収量を得るためには、燃油暖房機でハウス内を8~10℃に維持することが不可欠である。しかし、近年の燃油価格乱高下は、イチゴの生産コスト変動を大きくし、経営を不安定なものにしている。
 さらに、地球温暖化対策の観点からも農業における温室効果ガス排出削減が求められており、燃油暖房機の代替となる暖房技術開発が求められている。

システム概要

住宅用「地中熱利用換気システム」をもとに、イチゴ栽培ハウスの太陽エネルギー蓄熱利用システムを考案した。ただ、住宅と異なり、透明フィルムで被覆するパイプハウスは、集熱能力が極めて高い一方で蓄熱能力が乏しい。地中熱回収パイプは住宅の冷房負荷軽減に有用であるが、本実証はイチゴ栽培ハウスの蓄熱用途としてグリ石蓄熱層に着目した。

デッドスペースとなっていたイチゴ高設栽培槽下の空間にグリ石を積み上げてフィルムで覆い、ハウス余剰熱送気と直達日射で蓄熱すれば、冬期でもグリ石温度は約20℃まで高まる。このグリ石層で夜間は栽培槽を保温する構造とした。本システムは、作業空間および植物体の受光量を減らすことなく、イチゴ栽培ハウスの余剰熱蓄熱が可能となる。夜間のハウス内気温は成り行きとなるが、イチゴの温度感応部位である株元を含む栽培槽を12℃以上に維持できる(山口市気象条件)ため、冬期植物体の矮化を防げる。ハウス内気温が4℃以下まで下がりイチゴ果実に凍害の恐れがある場合には、非常時対応として、送気ファンによりグリ石蓄熱をハウス内に放出する。本システムは、晴天日には安定した暖房負荷軽減能力を発揮し、曇天や雨天が続いた場合には一時的に能力が限定されるが、山口県の気候では栽培上の問題にはなっていない。

システム概要

検証概要

【材料および方法】イチゴの省エネルギー栽培システム(以下:システム)は、2013年に報告した仕様の構造とした。同規模の栽培ハウス2棟を、試験ハウス(150㎡:次世代型パイプハウスにシステムを組み入れ、温風暖房機で気温を4℃以上に維持、)と対照ハウス(163㎡:温風暖房機で気温を8℃以上に維持)とした。システムの送気ファンは、時間制御(09:00-16:00稼働)から、温度制御(暖気吸気口温度>ぐり石蓄熱槽温度でON、暖気吸気口温度≦ぐり石蓄熱槽温度でOFF)に改良し、2016年12月1日より2017年3月31日まで稼働させた。さらに、ハウス内気温4℃以下でシステムが稼働し、グリ石蓄熱槽の残存熱エネルギーを放出させ、ハウス内気温を維持するように改良した。また、試験ハウスは蓄熱するため、冬期の換気が少なく、低CO2環境になるため、日中にCO2施用を行った。両ハウスに品種‘かおりの’及び‘紅ほっぺ’を2016年9月23日に定植し、山口型高設栽培暦に準じた栽培管理を実施した。矮化抑制のためのジベレリン処理および電照処理は行わなかった。両ハウスのイチゴ各品種の収量(1区10株4反復)、ハウス内外の気温、燃油使用量及びシステムの使用電力を測定した。

効果

【結果および考察】システムの稼働方法を温度制御にすることで、使用電気量を7割低減することができた(表1)。試験ハウスでは、この冬最も気温が下がった1月25日でも室内温度を概ね4℃以上を確保でき、シーズンを通し燃油使用量は0であった。暖房コストは80%削減できた(表1)。試験ハウスの‘かおりの’、‘紅ほっぺ’は、対照ハウスを上回る収量が得られた(図1)。増収にはCO2施用や前夜半の温度が対照ハウスより高いことが寄与していると考える。本研究は、農林水産省産地リスク軽減技術総合対策事業のうち省エネ設備等技術確立支援事業の採択を受けて実施した。


会報誌「大地の風」 402号に掲載







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